Gestaltfall
宗助は肱で挟んだ頭を少し擡げて、
「どうも字と云うものは不思議だよ」と始めて細君の顔を見た。
「なぜ」
「なぜって、いくら容易しい字でも、こりゃ変だと思って
疑ぐり出すと分らなくなる。
この間も今日の今の字で大変迷った。
紙の上へちゃんと書いて見て、じっと眺めていると、
何だか違ったような気がする。しまいには見れば見るほど
今らしくなくなって来る。
――御前そんな事を経験した事はないかい」
「まさか」
「おれだけかな」と宗助は頭へ手を当てた。
(夏目漱石 『門』より)
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Comments (2)
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でた、得意技炸裂。
それをしている姿を見たいです。:-)05-17-2014 22:05 白石准 (40)
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>白石准 様
露光時間が短ければ、画面の真ん中で回すのは楽になってきました。
やっている姿は企業秘密、もとい、異質過ぎて見せられません。(笑)05-17-2014 23:48 ぼーもあ (12)
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